2023年07月26日

山上被告は、鈴木エイト氏の記事を根拠にして安倍元総理を暗殺した!?

(1)鈴木エイト氏の記事を根拠に安倍元首相を殺害のターゲットとした!?

『週刊現代』(2023年7月15/22日号)で、ジャーナリスト・鈴木エイト氏が「山上徹也がこれから口にすること」というタイトルの記事を書いています。
彼はウェブメディア「やや日刊カルト新聞」の主筆であり、2013年から安倍元首相と旧統一教会との関係についての記事を書いてきたという。

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「週刊現代」2023年7月15・22日号

多くのメディアは、山上被告が憎んでいたのはあくまでも旧統一教会であって、当初は安倍元首相をターゲットにはしておらず、安倍元首相が統一教会の関連団体「UPF」(国連NGO)にビデオメッセージを送ったことから両者に関係があると思い込んで安倍元首相を狙撃した、と報じていました。

ところが鈴木エイト氏によると、山上被告はもともと「安倍晋三を直接憤りの対象とした可能性も高いと見ている」という。
なぜなら、山上被告は「やや日刊カルト新聞」の「熱心な読者」であり、安倍元首相がUPFにビデオメッセージを送る以前から「山上は、時系列に沿ってリアルタイムで安倍晋三と統一教会との関係を把握していた」からである、と理由を述べています(同誌53頁)。

そこから続けて、鈴木エイト氏は次のように発言します。
「つまり、山上が安倍をターゲットとした根拠は私の記事だったと言っても過言ではないのである」(53頁)
これは驚きです。
山上被告が旧統一教会から安倍元首相にターゲットを変えたのは、安倍元首相がUPFにビデオメッセージを送ったことを知ったからではなく、それ以前から愛読していた鈴木エイト氏の記事を根拠として、直接の憤りを安倍元首相に向けて殺害のターゲットとしていた、ということです。

「月刊Hanada」の花田編集長は、ユーチューブの「週刊誌欠席裁判」(2023/7/15収録)の番組で、鈴木エイト氏の「山上が安倍をターゲットとした根拠は私の記事だったと言っても過言ではない」という部分を読み上げる時、「本当なら(鈴木エイト氏も)取り調べを受けるんじゃないですか?」と述べておられますが、私も同感です。
安倍元首相を殺害する動機(根拠)を鈴木エイト氏が山上被告に与えていたとすれば、引き起こした事件が深刻であるだけに、鈴木エイト氏にも相当の責任があると言うべきではないかと思います。

(2)TBSと坂本弁護士一家殺害事件の関係を想起する

鈴木エイト氏が書いた記事が何かを大げさに煽り立てるような過激な内容であったか、それとも冷静で客観的な記事であったかは確認できません。
しかし、ともかく鈴木エイト氏の記事を愛読していた山上被告が、その記事を根拠として安倍元首相を殺害のターゲットにしたのだとすれば、逆に、山上被告が鈴木エイト氏の記事を愛読していなければ安倍元首相を殺害するという事件は起きなかったと言えるかもしれません。

ここで、TBSとオウム真理教による「坂本弁護士一家殺害事件」を思い起こします。
1989年10月26日、テロ組織・オウム真理教を批判していた坂本堤弁護士のインタビュービデオの内容を、TBSが放送前にオウム真理教の幹部に見せたため、9日後の11月4日に坂本弁護士一家が殺害された事件でした。

鈴木エイト氏は「実は私は、事件の9日前、山上のツイッターアカウントとメッセージのやり取りをしていた」という(53頁)。
つまり、2022年6月29日に鈴木エイト氏と山上被告はツイッターのダイレクトメールで会話をしており、その9日後の7月8日に山上被告は安倍元首相殺害を実行したということです。

(3)安倍元首相の「油断、慢心」があったから殺害された!?

鈴木エイト氏は、「この裁判には私も関わることになるだろう」と述べる(54頁)。
そして、「山上は、自身が背負わされた“被害”を助長してきたのが、安倍晋三であると認識していたはずだ」、「彼がそう認識するに至った根拠が私の書いてきた記事であるのならば、私にはその根拠を公判で示す責任がある」と、自身の責任について述べています。

すなわち鈴木エイト氏によると、山上被告はあくまでも“被害”を受けていた立場であり、その被害を助長した安倍元首相を憎むことには「根拠」があった、という論旨のようです。
さらに安倍元首相が殺害されたことについて、安倍元首相が統一教会系の国連NGO「UPF」に送ったビデオメッセージの中で韓鶴子(ハン・ハクチャ)総裁を「最大限に礼賛」したが、「おそらく、そんな映像が公開されても、自分の政治生命には何の影響もないと高を括っていたのだろう」、「しかし、その油断、慢心が凶弾を引き寄せることになった」と述べています(53頁)。

これはまるで、安倍元首相の「油断、慢心」等の落ち度があって殺害されたのであり、むしろ山上被告が行なったテロ行為に「根拠」があったと主張しているようです。

はたして、安倍元首相がUPFにビデオメッセージを送ったことに何か問題があったのでしょうか。
UPFは潘基文元国連事務総長やギングリッジ前米下院議長らが常連でスピーチしている国連NGOであり、ジム・ロジャーズ氏が顧問を務めています。

安倍元首相がスピーチをした会議(2021年9月12日)では、トランプ前米大統領、フンセン・カンボジア首相、アロヨ・元フィリピン大統領、バローゾ・元ポルトガル首相、ミチッチ・元セルビア大統領等も共にスピーチをしており、その映像はインターネットを通じて200万人が受信し、各国の現地放送局が放映したため約5億人が視聴したものでした。

もしも、このような国際的に権威あるNGOの会議について一部分のみの映像を切り取り、特定の宗教と政治家をことさら結び付けて過激な考えを煽るような発言を拡散する媒体が存在していたとしたら、その存在こそ重大な責任が問われるべきではないかと思います。
posted by むちゅう(江本武忠) at 23:16| Comment(0) | TrackBack(0) | 安倍元首相暗殺事件をめぐって